音響機器には「電源をオン・オフする順番」があるのを知っていますか?
【電源を入れるとき】間違った順番で電源オンオフすると、スピーカーやウーファーから「ブチッ!」とか「ボンッ!」という大きいノイズ音が鳴るんですよね。やってしまったことがある方も少なくないと思います。
PC → オーディオI/F → ミキサー → スピーカー
【電源を切るとき】
スピーカー → ミキサー → オーディオI/F → PC
実はこれ、機材の寿命を縮めたり破損してしまう可能性があるんです。
その理由は記事本文にて解説していきます。
(※本記事では主にDTMなどで使われるパワードスピーカー(電源が必要なアンプ内蔵型)の場合について書いています。)
なぜ電源を入れる順番が大事なのか?
スピーカー単体の電源をオンオフした際に「プチ」とか「ボフ」という感じのポップノイズが鳴ることがありますが、これ自体はそういうものなので特に問題はありません。
しかし、スピーカーやウーファーの電源を入れたあとでオーディオインターフェース(以下オーディオI/F)やミキサーなどの電源を入れると「ブチッ!」とか「ボンッ!」という、より大きなノイズが鳴ってしまいます。
これは電源オンオフ時に電気回路に瞬間的に発生する電流がアンプで増幅されることによって発生するものです。増幅された電気信号はより大きな負荷になって、機材に悪影響を及ぼします。
参照リンク:耳と音響機材を守る 正しい電源ON/OFFの順番
↑ヤマハの記事では「最後にパワーアンプの電源を入れる」と書かれていますが、これはどちらかというとPAのサウンドシステムの話ですね。DTMなどで使うスピーカーは基本的にパワードスピーカー(電源が必要なアンプ内蔵型)が多いので、パワーアンプは別途必要ありません。
電気信号の流れが大きく関係している
電気機器の電源オンオフ時には突入電流という「電源を投入した瞬間に流れる、定格電流よりも大きな電流」が発生します。
電源のオンオフやスイッチの切り替えなどによって電流が瞬時に増大する最大値は「定格電流の数倍」とも言われています。
ほとんどの電気機器はこの突入電流の負荷を見越して設計されているわけですが、複数の電気機器と回路中の増幅器(アンプ)を通っていくとさらに増幅された負荷となり、結果的に機材を損傷してしまうリスクがあります。
これを防ぐためにも機材の電源を入れる順番がとても大事です。
電源をオン・オフする順番
具体的には「電源を入れるときは電気信号の始点(音の入り口)から、切るときは電気信号の終点(音の出口)から」という順番が重要です。
【電源を入れるとき】
PC → オーディオI/F → ミキサー → スピーカー
【電源を切るとき】
スピーカー → ミキサー → オーディオI/F → PC
つまり、ざっくり言えば電源を入れるときはスピーカーから遠いところから、電源を切るときはその逆のスピーカーからという話ですね。
次項では僕の作業環境を例に電源オン・オフの順番を解説していきます。
関連記事:
【参考例】僕の作業環境の場合
参考までにうちの作業環境の場合は以下のような感じです。
音声信号はメインマシンのiMac→オーディオI/F(Monitor Out)→サブウーファー→スピーカーと流れていきます。なので、スピーカーから一番遠いPCから電源を入れていくわけですね。
ちなみにオーディオI/F(Line Out)→ヘッドホンアンプ→ヘッドホンに繋がっています。(ちなみにヘッドホンアンプを使う目的は複数人でヘッドホンを使うときのためと、以前はスピーカー(TD-M1)もここに繋げて使ったりしてました。)
うちの場合だと電源を入れるときは図の左から順番に入れて、電源を落とすときは右から順番に落とすのが理想的ということです。
例)うちの機材一覧と電源オンオフの順番
- メインマシン iMac (Retina 5K, 27-inch)
- オーディオI/F UAD - Apollo Twin DUO
- ヘッドホンアンプ Behringer - MiniAmp 800
- サブウーファー Presonus - Sub8
- モニタースピーカー Adam Audio - A4V
まとめ
- 電源オンオフの順番を間違えると機材を損傷するリスクがある
- 電源を入れるときは電気信号の始点(音の入り口)から
- 切るときは電気信号の終点(音の出口)から
あとがき
僕はかつて日本工学院の音響芸術科RECコースに在籍していたのですが、1年生の一番最初にスタジオでこの「電源を入れる順番」を習いました。
工学院のスタジオは機材がすごく豪華で、SSLのデカい卓(たしか9000Jだったかな?)、GENELECの ラージスピーカー(たしか1034)やニアフィールドスピーカーなんかがあって、ラックにも定番アウトボードがズラっと並んでました。
万が一、こういう大きなスタジオにある数十万~数百万、ヘタしたら数千万するような超高額な機材を破損してしまった場合には機材自体の弁償が発生する可能性もあるし、またプロが集まる現場であれば仕事がストップしたりリスケジュールしたりする場合にはスタジオ費用や演者さんのギャラなどの弁済や穴埋めなどが発生する可能性もあります。
つまらない凡ミスによってとんでもない迷惑やコストがかかってしまう最悪の事態となるリスクを防ぐためにも、電源を入れる順番を厳守することを基本中の基本として教わるわけです。
一方、自宅で音楽制作するDTMerは誰かに何か教わる機会もないためにこのようなことを知らない人もいます。たとえ小規模な自宅スタジオであっても愛用している機材は大事に扱いたいですよね。
そのためには今回の記事で書いたような電源を入切する順番のように一見ささいなことであってもきちんと気を付けることが重要です。
機材トラブルには充分気を付けて、楽しい音楽ライフを。
関連記事:
音楽制作にオススメのパワーサプライ・ディストリビューター5選【DTMer向けの電源選び】
コメント